写真 © Hiroshi Mizusaki
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写真 © CASE-REAL
図面 © CASE-REAL

cassette

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場所
Fukuoka, 日本
2022

福岡・唐人町に新たにオープンするアートギャラリー「cassette(カセット)」のための内装計画。1980年代に建てられた既存建物の複雑さを活かしながら、現代アートを展示する新たなギャラリーとして改修を行った。計画地となったのは、地上2階、地下1階の3層からなる鉄筋コンクリート造の建物。外観は真っ白な箱型のシンプルな見た目でありながら、内部はRC壁や階段が複雑にレイアウトされ、迷路のようにも感じられる独特な空間となっていた。私たちは外観はそのままの状態を維持しつつ、内部の複雑さを適宜利用することで、多種多様なスペースや変化を創り出して既存建築の特徴を引き出すことを目指した。

まず今回の建物の特徴の一つは、各フロア東側の床の一部に大きなスリットがあり、屋上から地下まで貫通するように光が降り注ぐ断面となっていることであった。さらに1階では、内側のガラスウィンドウによって採光部分が区画されており、私たちはこのインナーテラスのような独特な空間を活かして計画することにした。また、カウンターやベンチなどの造作は、空間の雰囲気に合わせてコンクリートで打設。これら各要素をダークレッドで統一し、ラウンジスペースとしての落ち着きを持たせた。床のカーペットは前述のインナーテラスまで張り伸ばし、空間全体に奥行きを持たせている。ローテーブルやボーダー照明等は、この空間のためにオリジナルで製作した。

一方2階のギャラリースペースは、全フロアの中で最も明るい空間となっていたことを活かし、壁天井を真っ白に仕上げることでこれを強調している。階段室のように閉じていた階段部分は撤去可能な壁を取り払い、新しく手摺を設けて動線に開放感を出した。そして階段の踊り場には1階と対照的なダークブルーのカーペットを張り込み、同色のオリジナルベンチを設置して小さな溜まり場のような場所をつくった。また1、2階の床は、過去の改修でその一部がEVシャフト用にくり抜かれていたが、敢えてこれを埋め戻さずにガラスで塞ぎ、採光として機能させながら上下階のつながりを感じられることを考えた。

地下階のギャラリーは2階とは性質を分け、既存の床や天井をそのまま活かして塗装を施す程度に留めた。そして壁や照明等の設備の在り方のみ整理して、地下特有の無骨さと緊張感を共存させている。

元々複雑だった3つのフロアに対し、必要な設備や工作物の整理、仕上げのコントロールなど様々な検討を行い、各シーンのニュアンスを微妙に変化させることで建物内部に更なる多様性を持たせている。築年数は30年を超え、ここ数年は使われないままになっていた一つの建築。ギャラリーという新たな拠点として、再びその存在が活かされるだろう。

クライアント:cassette
計画種別:内装設計
用途:ギャラリー
計画期間:2022年3月~2022年9月
計画面積:238.86平米
計画地:福岡県福岡市中央区唐人町
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 久保山実暉
施工:オブ
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
写真:水崎浩志

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